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フェアであらねば

知人のDJが2丁目のクラブイベントのラウンジで回すらしく、インスタのDMでインビテーションが届いた。
メインフロアで回すのはあまり関わりのない界隈のDJだらけで、正直楽しめそうになかったので(酔っぱらって誰彼構わず話しかければそれはそれで楽しいだろうが)、まぁ挨拶代わりに1、2杯ほど飲む程度ならと思い、出かけることにした。

オープンの21時から24時頃まで回すとのことで、22時頃に入場してみたが通常この手の大型イベントが盛り上がるのは終電後くらいの時間帯のため、当たり前だが人はまばらだった。
セキュリティを抜けてすぐのバーカウンターでジンバックを2杯頼んで、ラウンジで回している知人に軽く手をあげて「来たよ」とアピールしながら、グラスを受け渡し2人で乾杯をした。

しばらくラウンジで過ごしていたが、2杯目の酒がなくなる頃にトイレに立ち、その足でメインフロアの方を覗いてみた。だんだんと人が集まってきており、フロアの中心部の方には興奮して激しく踊るグループの姿も見えた。この時間から興奮して踊りまくりDJにヤジを飛ばしているのだから、おそらく界隈の関係者だろうなと推測しつつ、「こっちの方で楽しめそうにはないな」と改めて思って踵を返そうとしたら、「あれ、久しぶりじゃん」と誰かから声をかけられた。

暗すぎるフロアで目を凝らして顔を見てみると、2年ほど前によく食事に出かけていた男が立っていた。たしか出会いはInstagramで、自分が職場近くの飲食店でランチをしている写真なり動画なりをアップしたら反応してくれたのが馴れ初めだった。「俺もその近くに勤めているから、ランチにでも行こう」と誘ってくれたので、何度かランチをした後に、飲みにも出かけるようになった。

ある日彼がとあるクラブイベントに誘ってくれ、自分も興味があったので一緒に出掛けることになり、イベントが始まる前に近くのカフェで食事をすることになった。近くの席に座っていた女性たちはまだ20時台なのにベロベロに酔っぱらっていて、「これからどっかに飲みに行くの?」と、やけにフレンドリーに話しかけてきた。二丁目近くのカフェということもあり、この手のことは日常茶飯事で、観光客でないことが表面に表れている自分は「おすすめのゲイバーはどこか」「テレビで見るような女装家の人たちにはどこで会えるのか」などと質問されることは多いが、その日彼女たちから投げかけられたのは「あなたたちは付き合ってるの?」というものだった。

どきり、とした。彼は自分に付き合っている相手がいるかどうか確認しなかったし、自分は自分で特段自ら主張することでもないと捉えていたので、彼氏がいるとは話していなかった。彼とのことを浮気行為だとか思っていたわけではないし、聞かれなかったから答えなかっただけだが、傍目からすれば不誠実なのは自分だろう。どうか笑って「そんなことないよ、ただの友達」と否定してくれと願っていたが、彼の口から出たのは「俺は、付き合いたいと思ってるけどね」という言葉だった。

これで正真正銘、自分は下賤な男に成り下がった。その場では曖昧に微笑み返したが、それからというものの気まずさからだんだんと彼と顔を合わせる機会も減っていき、ここ1年は連絡も取っていない状態だった。

そんな彼が、自分の前にまた現れた。「久しぶりじゃん」と、オウム返しのように返答したら、彼は「まだ職場は○○駅なの? またランチ行こうよ」と8割の確率で社交辞令だと思われる挨拶を繰り出し、大人としてその場を収めていた。あのとき、彼は自分の反応で何かを察しただろうか。彼はモテるタイプなので一切気に留めずにそのまま他の誰かとよろしくやっていてくれているだろうが、あのときの彼氏に対する背信と、彼に対する背信による気まずさは今でも忘れられない。

子どもではないのだから、もう「そんなつもりはなかった、気を持たせていたのならごめんなさい」で誤魔化すことは許されない。フェアであらねばならないことを強く感じさせられた瞬間だった。

「そうだね、ランチでも行こう」
辛うじて返した返事は言葉だけが上滑りしているように感じた。たぶんもう会うことはないだろう。

by innocentl | 2019-05-07 14:45 | 日常 | Trackback | Comments(0)