2018年 02月 27日 ( 1 )

ドブネズミのように東京で生きる

知り合いの知り合い程度の人の話。
クラブで数回顔を合わせた程度で別段親しいわけではなかったが、SNSでは繋がっていてコメントのやり取りなどをしていた。

九州のド田舎出身で、高校を卒業してからは地元のショッピングモールの服屋で接客業をし、ある程度まとまった資金ができたら東京に飛び出してきたという。
東京では昼間は美容系の仕事をしており、夜はバーで働くという、地方から上京してきた若いゲイにありがちな働き方をしていた。
ファッションが好きで、稼いだお金のほとんどは服飾費に使ってるそうで、彫りが深く西洋人風な顔立ちということもあり多少奇抜な服もよく似合っていた。
そこまでは別段どこにでもいる「東京ドリームを追いかけてきた若者」なので、気にかかることなどなかった。

異変を感じたのは、彼が仕事を辞めたとTwitterで報告した頃からだった。
「これからどうしよー」と軽いノリで書かれたつぶやきからは焦燥感の欠片も感じられなかったが、頭があまり良くなくヤンキー気質な彼はそのうち適当な店でバイトでも始めるだろうと思っていた。

しかしそれを機に、急に彼の生活ぶりが贅沢なものに変わったのだ。
SNSの投稿なんて人生の「いいところ」だけを切り取って載せるものなので、実体とはかけ離れたものになってしまうのだろうとは理解できるが、それをふまえたとしてもあまりにも贅沢が過ぎる投稿が目立ったのだ。
20代前半の無職が何十万円もするアクセサリーや服なんて買えるわけがない、パークハイアットでスパークリングワインなんて飲めるわけがない。
彼がバーを辞めてウリ専で働いているということは風の噂で聞いていたので、てっきり「パパでもできたのだろうか」と思っていた。

そんな彼が突然SNSで炎上した。
どうやら彼はネットで知り合う人からお金を盗んで生計を立てていたようだ。
2桁にものぼるという盗難の被害者たちはSNS上で彼の悪行を公表し、捜査への協力を呼び掛けていた。
彼のSNSの投稿やFacebookの写真、プライベートなメッセージなどを公表するまとめアカウントなどもでき、日に日に熱を帯びている。


確かに彼のしたことは犯罪で、許されるべきことではない。
でも、初めて顔を合わせたときに彼は「東京で仕事頑張って田舎の両親に家買ってあげたい」と語っていたのを思い出してしまう。
東京でいろいろ壁にぶつかってしまったのだろうかとか、根は悪い奴じゃないんじゃないかとか、余計なことを考えてしまう。
彼の言った九州出身だという話や両親の話など、もしかしたらすべて真っ赤な嘘だったのかもしれない。
それでも、あの日クラブでお酒に酔いながら語ってくれた身の上話は、東京で孤独に生きる彼の内なる叫びだったのではないかと思い込んでしまいたくなる。

きっと僕も彼のことなど数ヶ月も経てば忘れてしまう。
罪を償った後、田舎に帰ってまっとうに生き直す準備を進めてほしいと、ささやかながら思う。

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by innocentl | 2018-02-27 14:32 | 日常 | Trackback | Comments(0)