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今年に入って思ったこと

結局のところ、差別主義者の一家に生まれたマイノリティの属性を持つ自分は、群れを追われるしかなかったのだろう。勉強ができて、そこそこいい大学に進学し、そこそこいい企業に入ったことで「できた息子」という属性を手に入れれば両親からも愛されるかと思ったが、身体を壊し退職したことで一気に「精神疾患の穀潰し」に評価が変わり、金の無心や嫌がらせを受けることになった。毒親界隈の言葉を借りれば、典型的な「条件付きの愛」というやつだ。

妹の夫はとあるダンスサークルに所属しているのだが、そこにはオープンリーゲイの男性がいるらしい。彼は「男同士だから別にいいじゃん」と、妹の夫と2人きりで外出したり、おふざけでややセクハラ染みた行為をしたりするらしく、妹はそれを快く思っていない。「だからゲイは嫌なんだ」「ゲイは性的異常者だ」というようなことをよく述べていた。

自分も同性愛者であるということは知ったうえでそのような発言をするのである。妹はあまり頭が良くないので、同性愛者という属性に「性的異常者」というレッテルを貼って侮蔑することが、目の前にいる兄を差別することだと頭の中で紐づいていないのだろう。差別をしている意識がないのだ。それと同時に私も「自分の夫がゲイの男性からおふざけでセクハラされている。2人きりで出かけることもある」という妹の不快感も理解できるため(相手がヘテロセクシュアルの女性だったとしても嫌だろう)、「それは夫とも話し合ったほうがいいよ」のような返答をしていたのだが、刃物で身体をぐさぐさ刺されているのに「痛い」と言えず、「あなたは悪くないよ」と返し続けなければいけないことに疲弊していた。傷ついていたのに、それを表明できなかったことがしこりになった。

自分はずっと傷ついていたのだと、最近になって自覚した。

最近のTwitterは、LGBTQに向けた露骨な差別発言がかなり多く、見ていると疲弊する。すり減る。目がかすむ。トレンドから離れる勇気も必要かもしれない。



また書籍の仕事を担当することができた。

年末から年始にかけてはリサーチで忙しく、3が日はかろうじて休めたものの、大みそかまで仕事が収まらなかった。実働時間としては正味そこまで多くないのだが、こだわってしまう性質なのでリサーチやら校正やらに時間をかけてしまい、およそ3週間ほどかけて書籍用の原稿10ページを仕上げた。

毎回書籍の仕事をするたびに「大変だし、もうやりたくないな……」と思うのだが、デザイナーが綺麗に文字を組んだり、挿絵を入れたりして調整してくれたフィジカルの書籍が手元に届くと「やってよかったなぁ」と、すっかり喉元過ぎれば熱さを忘れるというやつで浮かれてしまう。

そうした舞い上がった気持ちがまだ残っていたのだろう。ひょんなことから先日友人らと飲み屋で話しているときに、春に自分が携わった新しい本が発売になるという話になり、「〇日に発売だから、よかったら読んでみてね」という話をし始めた。社交辞令でどういうテーマなのかを聞かれたときに「今回はこういうテーマで、こういうインタビューをして……。例えばこういう問題があるんだけど、実は日本ってこの問題に対して、世間からの評価とは違って……」などと、ついつい話しすぎてしまった。「あっ、やばい」と気づいたときには、友人たちの顔にはあからさまに興味を失っているもののそれを表に出さないだけの優しさと社会性を持つ人特有の微笑や、そこに若干の戸惑いのエッセンスの混じった表情が浮かんでおり、「ああ、話しすぎた」と突然顔から火が出るほど恥ずかしくなってしまった。「ってな感じだから、よかったら立ち読みでもして!」と、バツンと独擅場を切り上げて会話のボールを周囲にパスをした。

自分は仕事が好きなんだと思う。昔書いた記事はたまに見返して「あの頃、こんなこと書いている」と思ったり、「今だったらこういう表現をするだろうに」と反省したり、過去の自分と向き合う時間も、わりと好きだ。でも世の中、当然だがそんなに人の仕事に興味がある人たちばかりではない。趣味を仕事にしてしまったばかりに、仕事や成果物に対しての愛着が、おそらく一般的なオフィスワーカーよりは高いのだと思う。そして「好きでやってる人たちだらけ」の業界であるがゆえに、周囲にあまり労働嫌いをあからさまに出す人がおらず、それもこの傾向に拍車をかけている。

自分は社会性のない人を見ると苦々しく思ってしまう性質なので、今回のこれは本当に恥ずかしく、今後しないようにしなければと肝に銘じた。自分の作品を愛でるのは、自分だけでいい。さほど興味のない人たちに無理に自分の仕事を「見て見て!」と押し付けないようにしなければならない。成果物がリーチしたところからのフィードバックは受け入れればいいだけの話だ。

by innocentl | 2023-03-06 16:19 | 日常 | Trackback | Comments(0)


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