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重い腰を上げ

明日から編集プロダクションのオフィスに通う。
肩書としては依然フリーランスのままだが、この編プロ内での仕事は時給+案件により上乗せありといった形になるらしい。
ほぼ1年ぶりにオフィスに通う生活になるので、果たしてうまくやってけるかどうか不安もある。
まぁ、会社員時代に貯めていた貯金もほとんどなくなってしまったし働くしかないのだけれども。

先日自分がやったインタビューが、某音楽サイトに載っていた。
今までローカルニュース欄しか担当していなかったので、今までとは比較にならないPV数を教えられ、全国の人が読んでいるんだなと改めて実感した。
実感はしたけれど、リアリティはそんなにない。
あくまでライターなんて裏方の仕事だし、別に署名原稿で売って有名になってやるというような野心もないからこれでいいのだけれども。

時間感覚とか早く取り戻さないとな。
今までちょっとゆっくりしすぎた気もする。

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by innocentl | 2016-06-30 15:46 | 日常 | Trackback | Comments(0)

家族だから

「熊本の人は家族みたいなものだから。家族が困っていたら助けたいのが普通ですから」と、とあるニュース番組内の特集で、スポーツ選手が熊本の被災地でボランティア活動をしている理由を聞かれた時に答えていた。

家族が困っていたら無条件に助けることが普通らしい世の中で、僕は一番辛い時期に家族から見放され縁を切り家を出た。
気がつけば家を出た冬は終わり、夏が近づいてきている。
家族との連絡手段を一切絶ってしまった今、「どうして」という恨みとも悲しみとも言えない思いも日に日に薄れ、淡々と毎日を過ごしている。
ほぼ着の身着のままで家を出たので写真なども持ち合わせているわけもなく、家族の顔も思い出せなくなってきた。

思えばテストでいい点を取ったから、部活で表彰状を貰ったから、いい高校に入ったから、いい大学に入ったから、課外活動に熱心に取り組んでいたからと、いつも何か条件を満たさなければ褒められたりしなかったわけで、本当の意味で愛されてこなかったのだろう。
高校もそこそこのところへ通い、専門学校へ進学した妹の方が愛されているように映った。
妹は要領がよく、友達にも恵まれていた。
自分は努力をしなければ誰からも見向きもされなかったので、周りから評価されることを渇望するように生きてきた。
余裕がなかったのだ。

多分、親からすれば僕の余裕のなさが可愛げのなさに映り、扱いづらかったのだろう。
褒められたい一心で、自分を見てもらいたい気持ちを原動力にして勉強なりスポーツなり課外活動なりに打ち込んできたのに、皮肉なものだ。

初めての就職で心折れ退職した際、家族なんだから暖かく迎えてくれるのではないかと浅はかに考えていたところがあったが、私学の職員になった息子という肩書きが外れた瞬間に風当たりは強くなった。
どうやら僕はよくできる息子という肩書きがなければ家族の一員として扱ってもらえないようで、その事実をまざまざと見せつけられた時に「ああ、もうこの家にはいられないんだろう」と、ろうそくの火がふっと消えるかのように今まで縋り付いてきた家族という幻想がうち消えた。

多分、親の葬式にも行かないだろう。
薄情な息子だと思われるかもしれないが、最初に見放してきたのは向こうだし、もう修復不可能なくらいに家族への気持ちというものも失ってしまった。
記憶とは不思議なもので、変なことはいつまでも覚えているのに、家族と過ごした20数年間の記憶はだいぶ薄れてしまった。
親がどんな声だったのかも思い出せない。

家族だから無償の愛を注ぐとか、家族だからいつでも助け合えるとか、世の中は家族という団体を神格化しすぎだと思う。
「家族なんだからわかってくれるよ」「家族なんだからもう一度話し合ってごらんよ」とか、家族なんだから家族なんだからと宗教なんじゃないかというくらいに「家族は強い絆で結ばれているもの」という信仰が蔓延っている。
世の中いくら話し合っても分かり合えない人もいるし、何が原因というわけでもなく馬が合わない人もいる。
それがたまたま家族だったというだけの話だ。

一人で生きて、一人で死ぬ。
誰かに迷惑をかけたくないし、それが一番の望みだ。
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by innocentl | 2016-06-27 01:50 | Trackback | Comments(0)

渋谷

Facebookでベトナム出身の外国人男性から友達申請がきていた。
ベトナム人の知り合いなんていただろうかと思い写真を見てみると、昔クラブで会ったことがある人だった。

数年前の秋だったと思う。
大規模なクラブイベントがアゲハであり、僕もそこに行っていた。
明け方近くの太陽が昇りはじめたプールサイドで踊っていたら、小柄だががっしりした体型の、目力が強いアジア人に声をかけられた。
東南アジア系のクラバー特有の、日に焼けた肌に派手な柄のオーバーサイズなタンクトップを着ていたと思う。
よくあるナンパだろうと思っていたら、「この間、新宿のクラブイベントで見かけた」と言われた。
彼はその時に僕が着ていた服まで覚えていた。
「ずっと声をかけたかったけれど、いつの間にか見失ってしまった」と、彼は言った。
「こうして今日会えて本当に嬉しい」とも言っていた。
中途半端にロマンチストな僕はその言葉に何か感じるものがあり、彼と連絡先を交換した。

後日、渋谷で待ち合わせをしてデートをした。
クラブで会った時とは違い、白のシャツにグレーのジャケットを羽織った綺麗めな格好で彼は現れた。
特別行きたいところがあったわけではないので適当に渋谷駅周辺をぶらつき、古着屋があれば入って物色したり、ゲームセンターがあればリズムゲームを2人でプレイした。

歩き疲れたので路地裏にあるオープンテラスのカフェに入って、彼はアイスコーヒーだったか何かを、僕はウォッカトニックだったかモヒートだか、とにかくミントの入ったアルコールを頼んだ。
テラス席でお互いのことを少しずつ話している時、彼はプログラマーをやっていると教えてくれた。
任天堂のゲームくらいしかプレイしないような自分でも名前は聞いたことがあるくらいの有名な和風アクションゲームのプログラミングをしていると話していた。
「大学では何を専攻しているのか」と聞かれ、「言語学。中でも音声学がメイン」と答えると、「エンジニアって顔してるのに意外だね」と彼は笑っていた。
エンジニア顔って何なんだろうかと疑問に思ったけれども、日本人特有の曖昧な笑顔でさらりと流してしまった。

その後はまた目的もなく渋谷をぶらつき、NHK近くの路上で売っていたジェラートを買ってベンチに腰掛けながら2人で食べた。

それからずっと連絡は取っていなかった。
たまにクラブで顔を合わせることはあったが、元気かどうか尋ねるくらいの軽い挨拶しかせず、お互いデートの件には触れずにいた。
別に何か問題があったわけではないが、自然と連絡を取らなかったのだ。
理想的で品行方正なデートをしたけれども、決定打がなかったというか、無味乾燥で刺激がなかった。
おそらく向こうも同じ気持ちだったのではないだろうか。

そうして顔を合わせる機会も減り、すっかり忘れていたところにきたのが今回の友達申請だった。
クラブで声をかけられた時は確かに高揚感のようなものはあったけれど、それは夜のうちにだけ発動する魔法のようなものだったのかもしれない。

お互い魔法が解けた状態で会った渋谷のデートは理想的で、品行方正で、無味乾燥で、退屈だった。
そうした退屈を共有して過ごしていける相手に彼は相応しくなかったし、それは彼も同じだったのだと思う。

少し曇った渋谷はとにかく退屈だった。
そんなことを思い出した日だった。
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by innocentl | 2016-06-05 02:57 | Trackback | Comments(0)

みきちゃん

男性にアロマエステと称した性感マッサージを施すメンズエステには色んな子がいた。

母子家庭のみきちゃん。
顔立ちは中の中。体型はぽっちゃり寄りの癒し系。
3人姉妹の真ん中で、20歳。
20歳だけど定時制高校を卒業したばかり。
お母さんは少し酒乱で、同情心を煽ってみきちゃんから経済的搾取をするタイプの毒親。
みきちゃんもお母さんや姉妹のことは嫌いじゃないから共依存している。
どちらかと言えば地味目の顔立ちだが、出会い系で会った男の人や受付のボーイと奔放にデートやセックスをしている。
ゆくゆくは大学か専門学校に進学したいと思っている。

大学生のゆみちゃん。
2留している、今年24歳。
顔も体もほぼ完璧なスキがないタイプ。ダンスをしているから引き締まったスレンダーな身体つき。
でも大学を2留してたり友達に借金してたり、この店でけっこう稼いでいる上位ランカーの割には経済的に余裕がなさそうな、お金や生活にはルーズなタイプ。
一人暮らしをしていて親から仕送りを貰っているみたいだけれど、そこまで干渉的じゃないから機能不全家族の可能性もあり。
食生活はかなり偏っていて、炭水化物と糖質ばかり摂取している。

バックグラウンド不明のりさちゃん。
四国から東京へ単身で渡ってきたということだけ話してくれた23歳。
家族のことを話したがらず、帰るつもりもないそうだからきっと家出同然で出てきたはず。
この店に来る前は友達や男の家を転々としていたそうだけど、今は事務所の一角にあるソファーをベッド代わりに寝泊まりしている。
週末は歌舞伎町のキャバクラで働いたり、そこで知り合った男とクラブで騒いだり、なんだか生き急いでる子。
日焼けした肌に肉感的な身体つきで、服装もメイクも夜の仕事をしている子特有の派手気味な雰囲気。

売れないあかりちゃん。
週3日勤務の24歳。
昼職は編集プロダクションでアシスタントをしたり、フリーランスでライティング業務をしているという。
他の子と顔を合わせたくないのか、ほとんど店外待機。
おそらく「あくまで副業」という意識を持っていて、他の嬢と同類に扱われたくないタイプ。
かろうじて繋がるWi-Fiと電源のある近くのカフェでいつもPCと向き合って難しそうな顔をしている。
顔は悪くないけれど、良くも悪くも個性がない顔立ちだからパネル指名で売れ残りがち。

サバ読みのゆかりさん。
40代だけれども30歳ということで務めている。
確実に30代のそれではないけれど、付いているお客さんは昔からの常連さんが多いから暗黙の了解なのかもしれない。
昼職ではたまに出張もあるらしく、よく嬢の待機部屋に観光地特有の名産を使用したとは名ばかりの何の変哲もないクッキーや饅頭を置いて帰る。
指名が入らなかった嬢を励ましたり、さすがは年の功といった対応が光る。

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by innocentl | 2016-06-03 15:00 | フィクション | Trackback | Comments(0)

夏日と文庫本

夏になると、本を読みたくなる。
よく読書の秋と巷では言われているけれども、自分にとって本を読みたくなる季節は圧倒的に夏だ。

子どものころ、夏休みの読書感想文のために本を買い与えてもらっていたのがきっかけだろうか。
小学校に入る前も、退屈しないようにということで本を買ってもらっていた気がする。
アレックスシアラーの「青空のむこう」「チョコレートアンダーグラウンド」「海のはてまで連れてって」なんかが好きだった。

大学に入ってからも夏にはよく本を読んでいた。
講義と講義の間、夏日が差し込む古い講義室の窓際で主に金原ひとみや村上春樹の文庫本と、カズオイシグロなどの授業で知った作家の洋書をよく読んだ。
古い講義室のクーラーがごうごう音を立てて風を吹かせ、少し肌寒いくらいなのに窓際は日差しが暑くて、大学に隣接している神社の雑木林の木漏れ日がちらついていた。
読み終わってふと時計を見ると15時を回っていたりして、「今日はどこかへ寄って帰ろうかな」などと思いながら教室を出る。
むっとする熱気が廊下にこもっていて、階段を下りて中庭に出ると今度は傾きかけているがいまだ強さを失っていない西の日差しが身体を刺す。
まぶしくて目を細めながら駅の向かう。

駅のホームでまた少し文庫本を開いて、気に入ったページを読み直す。
どうしてここで主人公はこんな行動をとってしまったんだろう。自分だったら同じことをするだろうか。自分がこの人と付き合ったら、この主人公のように裏切るだろうか。なぜ自殺をしたのだろう。
帰りの電車に揺られ、まだ暑い日差しを身体に感じながら、とりとめもなく妄想をする。
そんな時間が好きだった。

今年もまた暑い季節が始まる。
文庫本を買いに行こうかな。

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by innocentl | 2016-06-03 14:30 | 日常 | Trackback | Comments(0)

くじら

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by innocentl | 2016-06-01 17:58 | Trackback | Comments(0)