ブラックアウト

酷く酔っぱらってしまったため、ブラックアウトを起こした。

気が付いた時にはとあるコミュニティーセンターのロビーに座っていて、なぜか横に座っていた男が泣いていた。
おそらく僕の悪い癖で、酔っぱらっている間に彼の身の上話でも聞いてしまったのだろう。
状況が良く理解できないまま、今までに起こったことを必死で思い起こそうとした。

確か僕は新宿で開かれたとあるイベントにふらっと立ち寄り、友人たちと酒を飲み交わしながら雑談をしていた。
おそらく隣に座っている男はそのイベントでブース出展していた団体の中にいた一人だろう。
15時くらいから飲みはじめ、17時くらいまで屋外にいた記憶はあるが、そこからの記憶が一切ない。
コミュニティーセンターで意識を取り戻し始めた自覚があるのは20時過ぎだったので、3時間ほど記憶を失いながら行動していたことになる。

「こんなに話せた人は初めてだ」と彼は言った。
記憶がないので何とも言えないのだが、おそらく成人男性が涙を流すほどなのでよほど深入りした話をしていたのだろう。
酔いが醒め始めたころからの記憶を必死でかき集めると、彼は職を失い生活保護を受けている身で、今は貧困者が一時的に雨風をしのげるシェルターで暮らしている人間であるということが判明した。
病気を理由に職場を首になったらしいが、家族との関係も悪く、さらに東京近辺の出身ではないので身寄りがないという。

果たしてそんな重い話を酔っぱらって記憶が飛んでいるうちに本当にしたのだろうかと、にわかには信じられなかったが、どうやら本当らしい。
中途半端なやさしさは人を傷つけるだけだとわかっているのに、酔っぱらうとどうしても持ち前の知りたがりの性分が出てきてしまって、結局人の人生にずかずかと深入りしてしまう。
自分の悪いところで、直さなければいけないところなのだと思うのだが。
自分だって彼のことを支援できるわけではないし、話を聞いたところで「大変ですね」しか言えないのだ。
寄りかかられるだけの軸を僕は持っていないし、無責任に他人の人生を聞きかじって「ああ、こんな風に生活している人もいるんだなぁ」と思うだけで、要はポルノ的に他人の人生を消費している最低な男なのだ。
「大変そうな人のお話を聞いた」で心を痛めたフリの要はオナニーをして、翌日からは自分の人生を生きるだけで精いっぱいなので忘れてしまう。
「同情してあげている」「理解してあげている」どこか上から目線の自分に酔っているだけなのではないか。

自分はなんて残酷なことをしてしまったのだろうか。
「また会えるよね」という彼を駅まで送り届け、その場を後にした。
おそらくもう会わないだろうに。

彼からTwitterのフォロー申請が来ていたが、許可することなくこのまま過ごすのだろう。
そういう人間なのだ、自分は。
飲酒自体はたまにしかしないが、深酒するのを止めねば。
本当に酒に弱くなったなと感じる。
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by innocentl | 2016-08-15 18:36 | 日常 | Trackback | Comments(0)
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