クズを演じる

「仕事は なにをしていますか」
明らかに日本人のそれとは違うイントネーションで彼は僕に聞いた。
中国人だろうか、台湾人だろうか、シンガポール人だろうか。
多少大柄なアジア系の顔立ちをした男が僕の目の前に立っていた。
時刻は22時を回ったくらいの、クラブでの出来事だった。

いきなり仕事のことを聞くなんて不躾すぎやしないだろうか。
それとも彼の国ではクラブでナンパをする際、いきなり相手の職業について訊ねることはポピュラーなのだろうか。
初対面の相手に「可愛いですね」や「よく来るんですか」のような話題を出すのは普通すぎると思って、そのような質問を僕に投げかけたのであろうか。

「学校の 先生を しています」
爆音響くクラブで、日本語のネイティブでない相手にも伝わるように、はっきりと大声で答えた。
正確に言えばクラスを持っているわけでも授業を行なっているわけでもないし、学校職員という扱いになるのだが、学校で働いてるというとほぼ確実に教員だと思われるだろうし、一期一会の外国人観光客相手にそんなに正確な自己紹介などしたくないと思ったので、そう答えた。
「まぁ、休職中だけど」とも思ったが、もはやどうでも良かった。

「なんの 先生ですか」
彼はそう返してきた。

「あ、長引きそうで面倒くさいな」と思い、軽く左手を上げて「この話はおしまい」のポーズをとり、僕はフロアへ向かった。
クズだな、と自分でも思った。

一人でフロアで踊っていると、盛り上がった外国人たちが僕を見つけ、「一緒にステージに上がって踊ろう」といったような言葉を投げかけながら腕を引っ張ってきた。
乱暴に腕を振り払って中指を立て、一人で踊らせろという意思をアピールした。
「なんだこいつ」のような目で見られ、若干僕の周りの空気が白けた。

クラブでは人が変わったようにクズな振る舞いをする。
二重人格か何かなのではないかと、自分でも時々不思議になる。
クラブを出てしばらく経つと、普段通りの自分に戻る。
荒々しく攻撃的で、人を物のように扱って、気持ちを踏みにじるような自分はいなくなる。

あの空間にいる間だけ、僕は変になる。
しかし、クラブに行かないとなると、僕は現実世界での人格を保つのが難しくなる。

抑圧されたものが、顔の分かりづらい薄暗いブラックライトとレーザーが飛び交う空間でのみ、放出されているのではないだろうか。

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by innocentl | 2015-08-24 19:30 | 日常 | Trackback | Comments(2)
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Commented at 2015-09-05 23:18 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by innocentl at 2015-09-13 10:48
Rさん
初めまして。読んでくださってありがとうございます。
P!NK、いいですよね。今でもジムで運動してる時によく聴いてます。

こんなブログですが、これからもお暇なときにどうぞご覧になってください。


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