読書とピアス

この間待ち合わせをしたとき、僕は本を読みながら彼氏を待っていた。
本を読むのに夢中になっていたので、彼氏が近づいてきたのに気付かず、ふいに声をかけられて少し驚いてしまった。

「本読んでたの?本って最後まで読んだことないや」

と、彼氏が言った。
だろうな、と思った。
決して悪い意味で言っているわけではないのだが、本を読むようなタイプの人間ではないのは見た目からも明らかだ。
現に彼は学校をサボって遊びまわってたタイプの人間である。

「読書感想文書くときさ、最後まで読めないからなんて書けばいいかいつも困ってたんだよね」

文章を書くのも、文章を読むのも好きな僕は彼の話に全く共感はできなかったが、別に共感できなかったからと言って、それが軽蔑だったり憐憫に繋がるわけではない。
そりゃあ、本を読むのが苦手な人間だっているだろう。
本が少しばかり苦手というのは、彼の一面だけである。
彼の生き方や考え方は見習うべきものが多いし、生まれてこの方ずっと違う世界で生きてきたからこそ、彼の考えや言葉にはっとさせられることすらある。

僕は生きるのが苦手だが、彼にとってそれはどちらかというと得意分野だ。
世の中バランスが取れている。

お箸を使うのが苦手な彼は、その代わり料理が上手い。
初対面の人との会話が得意な僕は、職場の人間関係が苦手だ。

世の中、どこかで帳尻があっている。


「この作者、『蛇にピアス』って本も書いたんだよ。何年か前に映画にもなったんだけどさ。吉高由里子が出てた。それに出てくるアマって登場人物に、すごく似てると思うんだよね」

そう彼氏に伝えると、「そうなの?」と首を傾げた。

「そうそう、ピアスボコボコにあけてて、髪も赤いの。舌はスプリットタンにしてる人」

「スプリットタン!可愛いよね。練習すると動かせるようになるみたいだね」と、彼が言った。
スプリットタンという言葉を彼が知っていたのは意外だったが、ピアス中毒の人がスプリットタンを知らないはずはないか、とも思い直した。

「今度さ、一緒に観てみる?映画の『蛇にピアス』」

次のデートの予定が決まった。
多分、彼は「えー、俺こんなんじゃないよー」と、高良健吾が演じるアマのビジュアルを見て言うだろうな、と思った。

いや、そっくりだけど、と僕は言葉を飲み込むのだろう。

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by innocentl | 2015-07-16 21:38 | 日常 | Trackback | Comments(0)
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