現場と本部

僕は今、本部と呼ばれる場所で仕事をしている。
支社というか関連会社と言うか、とにかく本部グループが所持している会社全体を取りまとめている場所で仕事をしている。

先日、現場で人手が足りておらず、新人である僕は現場のイベントでの雑務処理を任された。
休日出勤な上、朝も早いので気乗りしなかったが、断れるわけもなく現場に出向いた。

本部の人間が行ったところで現場のノウハウなどわからないし、行く意味なんかないのではないか。
早いところ仕事を片付けてさっさと帰ろうと思っていた。


しかし、現場に足を踏み入れて驚いた。
周りが親切で、僕を歓迎しているのだ。
みんな笑顔で和やかで、良いチームワークで働いている。

呆気にとられたまま仕事をしたのだが、昼は弁当まで差し入れてくれ、僕よりも若い女性職員がお茶まで淹れてくれた。
「そこまでしなくてもいい」と断ったのに、現場の上長は僕を車で本部ビルまで送ってくれた。

現場の人間は積極的に僕に話しかけてきた。

「いきなり本部配属だなんて見込まれてるんじゃない?」
「私はずっと現場がいいなー。オフィスでなんか働けないかも」
「本部って一歩入ると空気が張り詰めてるっていうか、怖いよね。胃が痛くなるよ」
「今社宅に住んでるの?俺も去年まで住んでたよ。あそこの店の惣菜安いよ」

物珍しさで話しかけられていたところもあると思うが、こんなにも和やかな雰囲気で仕事をしている現場の人間が羨ましかった。
「本部勤務ってものすごいプレッシャーがあると思うけど、潰されないでね。何かあったら遊びにおいで」とまで言ってもらった。


現場は現場で大変なことが多いと思う。
残業だって本部の桁じゃないくらい多いし、何よりも直接顧客(という言い方は我々の業界はしないが)を相手にしている分、気を使うところも多いだろう。

だけど、ああいう環境に身を置いて毎日を過ごせるのを羨ましく思ってしまった。
隣の芝は青いというけれども。


現場配属になった同期は、春から関わっていたプロジェクトに一区切りがついたり、直接顧客がついた。
他の現場配属になった同期は、毎週のように出張に出かけ、忙しそうにイベントの運営をしている。
最近、一人で現場の指揮を任せてもらえるようにもなったそうだ。


僕は、何をしているのだろうか。
春からずっと本部で働いているが、場所が場所だけに迂闊なことはできない。
なので責任のある仕事はまだ任せてもらえないし、そもそも今の仕事ですらミスを犯している。

現場はある程度プロセスがぐちゃぐちゃでも、最終的に顧客がつけば良しとされていることもあり、若手がワイワイしながら試行錯誤をしている。
本部勤務の若手は、とにかく失敗をしてはいけないために、最初は何もさせてもらえない。

型にはまった稟議を上げ、承認を貰い、型にはまったルーティンで仕事をこなす。

「大変だけど、仕事は楽しいよ。今度のイベントの広報資料、ほとんど私が作らせてもらったんだ」と、お酒の席で笑顔で話す同期が羨ましくて羨ましくて仕方がない。

僕の仕事なんて、誰からも感謝されることもなく、失敗したら人一倍叩かれる仕事である。
できて当たり前、誰も感謝しない。
それはそうである。
給料が間違いなく振り込まれた。予算の申請が予定通り下りた。出張の手配を間違えずに行った。
現場の人間がスムーズに動けるように、バックオフィスが正確に機能しているのは当たり前のことであるのだ。

だけれども。
別に望んでこの部署、本部に配属になったわけではないのに。

贅沢な悩みだとは思う。
残業だって現場に比べれば少ないし、交通アクセスだって他の場所に比べれば格段に良いし。


異動願いを出すべきか。
だけど、この部署でまだ何も身につけられていない。

現場の配属だったら、希望の部署の配属だったら、どんな生活をしているのだろう。
そもそも専門外の部署であるし、自分は何をしているのだろう。


最近、よくそんなことを考える。
死ぬまで人は働かなければいけないのに。
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by innocentl | 2014-11-09 23:32 | 日常 | Trackback | Comments(0)
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