曖昧な関係2



約束の時間よりも少し遅くやってきた彼は、飄々とした顔で「何選んでんの?」と聞いてきた。
「豚肉。これが一番安いから」と答えると、彼はその肉を棚に戻して、割高の黒豚の肉をカゴへ入れなおした。

やってしまった、と思った。
詳しくは話してくれないのでわからないが、ベイエリアのタワーマンションに住むようなご身分の人の前で安い肉を選んで買うような姿を見せるのは、ご法度だったのかもしれない。
ツイッターでの他人とのやり取りから察するにも、彼はいつも高そうなレストランで食事をしているわけだし。

元彼は楽だったな、とぼんやり考えた。
経済的な価値観が似ているというわけではなかったけれども、食に関して無頓着なところがあったから、自分が何を作っても美味しいと言ってくれた。
いや、多少文句を言われたこともあったっけ。忘れてしまった。

そのまま他愛のない会話をしながら食材を選び、お酒の売り場まで行った。
何か飲もうと言われたので、カゴにクラブでいつも飲んでいるZIMAを入れた。
完全に味はサイダーで、酒を飲んでいるという感じはしないけれども、ZIMAの口当たりの軽さとアルコール度数の低さは、クラブで踊って頭をブンブン振っても吐き気を催さないから好きだ。

「好きだね、ZIMA」と言われた。
彼と初めて会ったときも、自分はZIMAを飲んで踊っていた。
僕のキチガイのように踊る姿を見て、友人を呆れさせていたけれども、その呆れた友人の友人が彼だった。

フロアで踊り疲れて、バーカウンター前に行くと、友人の隣に彼がいた。
「この子、21」と、ぶっきらぼうに友人が僕を彼に紹介してくれた。
「はじめましてー!え?何?友達?」と、酔っぱらった勢いで会話をしたのを覚えている。

あれは午前3時くらいだったか。
Britney Spearsのtil the world endsがフロアで流れていた気がする。
そのまま意気投合して、MISIAの曲でフロアが閉じるまで踊って、朝食を一緒に食べたっけ。

帰りが一緒で、疲れた彼が頭を僕の肩に擡げてきたときに、なんとなくドキドキした気がする。
日曜の朝6時過ぎで一般人はほとんどいない、日本最大のゲイクラブイベントがあった翌朝の新木場駅は、ゲイかクラブ帰りのクラブジャンキーしかいないから、少しくらいの密着は気にならなかった。


買い物を終えて、相手の家まで向かった。
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by innocentl | 2013-04-06 18:21 | 日常 | Trackback | Comments(0)
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